正常な成長
生まれたばかりの赤ちゃんの平均身長は50cm程度にすぎませんが、乳児期、学童期、思春期等を経て大人になるまでに、身長は通常3~3.5倍程度伸びます。
この間の成長の仕方には個人差がありますが、身長の伸びる速度や伸び方にはほぼ一定したパターンがあり、乳児期には急激に伸び、その後は緩やかに成長して、思春期に再び急激に伸びるようになります。このようなパターンになるのは、成長する過程で、さまざまなホルモンが成長を調整しているからです。
また、成長に個人差がみられるのは、両親の体格や子ども自身の体質、栄養、生活環境、運動などさまざまな要因の影響を受けるためです。成長のラストスパートとなる思春期を迎える時期が早いか遅いかによっても、最終的な身長は変わってきます。
成長加速現象(身長スパート)
思春期の身長スパートは男女とも女性ホルモン(エストロゲン)に依存しています。エストロゲンは下垂体の成長ホルモン放出ホルモン受容体の感受性を増加させ、成長ホルモン分泌を増加させ、身長発育を促進させます。同時に、エストロゲンにより骨成熟が進行し、最終的には骨端線が閉鎖し、身長発育を停止させます。例えば、男児においてエストロゲン分泌が認められない病態では、男性ホルモン分泌は保たれていますが、骨成熟は進行せず骨端の閉鎖は起こりません。したがって、エストロゲンの骨成熟に果たす役割は明確です。女児の方が身長発育が早く、思春期獲得身長が小さいことは、女児の方がエストロゲンの産生量がより多く、骨成熟がより促進する為です。
思春期のスパート開始後、成人身長に達するまでの獲得身長は、思春期発来年齢が若いほど大きく、年長になるほど小さくなります。平均的な身長の小児では、身長スパート開始年齢を女児で9.5歳、男児で11歳とすると、その後の獲得身長は女児25cm、男児30cmです。
女児では、乳房の発育がみられた時は既にエストロゲンの作用がある為、成長スパートは始まっています。
男児では、下垂体からの卵胞刺激ホルモンの刺激により精巣がまず発育腫大します。男児での思春期発来は精巣容量を目安にする為、女児と異なり、エストロゲン分泌以前に思春期発来を認めます。通常、下垂体からの黄体ホルモンの刺激によるテストステロン分泌は、精巣容量が大きくなってから始まる為、男児の思春期開始時にはまだ成長スパートはみられません。したがって、思春期発来からしばらくして成長スパートが始まり、前思春期に徐々に低下していた成長率は急激な増加傾向をみせます。約2年後にピークに達したのちに低下し、変声を認め、ピークの3年後には年間成長率は1cm以下になります。