低身長・二次性徴・思春期内科 // みらいクリニック(新座市)

み ら い ク リ ニ ッ ク

~小児科を中心とした地域医療と思春期医療のクリニックです(一般内科外来もあります)~

自殺


 平成21年度の死因統計で「自殺」は、10~14歳の第3位、15~19歳の第1位です。男女別では、男子の10~14歳の第3位、15~19歳の第2位で、女子の10~14歳の第3位、15~19歳の第1位です。このように、思春期において「自殺」は大きな問題になっています。また、その背景に未遂も多く存在することを理解することが大切です。
 自殺企図の児童・生徒のうち約65%が、自殺に駆り立てられた特定の出来事を挙げることができます。思春期の自殺企図のほとんどが、学業面や社交上の問題です。いじめを受ける、警察沙汰になる、家族が不安定な状態である、性的指向に疑問を抱いている、新たな症状が診断された、最近誰かがなくなった、誰かが近いうちに亡くなるなどのストレスを抱えるような人生の出来事によって起こっています。また、別の人が自殺したという知らせを受けたことや、メディアで幻想的に描かれている自殺について読んだり、目にしたりすることによって、自殺したいという考えに拍車がかかることもあります。
 身体的虐待や性的虐待も、自殺のリスクを高めることがあり、女性の自殺企図の15~20%に非虐待経験があります。また、思春期では家族間の衝突と自殺企図との間に何らかの関連性が強く認められることが多くあります。

自殺企図

 児童・生徒が「死にたい」と言った時には、真剣に受け止める必要があります。「死にたいという人は死なない」という諺は神話であり、実際に自殺した人は、どこかで「死にたい」という自己表現をしていることが多くあります。また「笑っているから大丈夫」という諺も神話であり、笑っていても自殺することはあります。
 自殺企図は以下の順でレベルが増加します。④以上は危険な状態です。
 ①生まれてこなければ良かった。
 ②死にたいと思ったことがある。
 ③しばしば死にたいと思う。
 ④死ぬ手段を考えて決めている。
 ⑤実際に準備をした。
 ⑥未遂をした。
 これに加え、衝動性の判断も必要になります。衝動性の高い児童・生徒は、思い立ってから実行することを止めることは困難です。
 児童・生徒から自殺企図を打ち明けられた場合、信頼したから打ち明けたのですから、「死ぬことはいけない」と客観的に答えるのでなく、「死んでほしくない」「生きていてほしい」「守りたい」「君がいると幸せだ」「大好きだ」「君が必要だ」などと自殺してほしくない気持ちを強く伝える必要があります。また、自殺を打ち明けた児童・生徒は「お母さんに言わないで」など保護者に伝えることを拒否することが少なくありません。その場合、安易に請け負うのでなく、「守りたい、死んでほしくない、生きていてほしい」という気持ちを強調し、その為に保護者に話すことが必要であることを理解させることが重要です。また、保護者や家族に伝えると言うと、笑って「嘘だった」「冗談だよ」「引っかかった」など前言を撤回する児童・生徒もいますが、安易にその撤回を受け入れるのでなく、自殺企図の表現は真剣に受け止める必要があります。

自傷と自殺

 近年、自傷を行う児童・生徒が増加しています。自傷と自殺の心理的機序は異なり、「死にたい」と思わない自傷が多くあります。しかし、自傷のある児童・生徒は、自分を大切にできない為、何らかの大きなストレスが加わると、自殺に結びついてしまう危険性があります。

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