インフルエンザワクチンと水銀(チメロサール)について
日本の製品を含め、世界で生産されているインフルエンザワクチンをはじめとしたほとんどの不活化ワクチンには、 1930年頃よりチメロサールという輸送・保存時の防腐剤が、容器内の細菌などによる汚染を防ぐ目的で含まれていました。
チメロサールは約49%のエチル水銀を含んでいますが、健康被害が報告されているメチル水銀とは異なり、 神経組織を始めとした臓器親和性は低く、その半減期(体内に取り込まれた量が半分に減るのに要する期間)も短くて、 1週間未満(メチル水銀は半減期約1カ月半)とされています。現在のところ、実際的な健康被害の報告も、局所の発赤や軽度腫脹、発疹などが主体であり、 重大な健康被害(神経疾患など)を生じるといった研究報告もありませんが、水銀製剤であるということから理論上のリスクに対する問題点が議論されています。
WHOは当面はチメロサールを可能な限り減量し、将来的には代換えとなる保存剤を開発し、これを除くことを各国に向けて勧告しています。 本邦でもこの勧告を受け入れ、除去ないし減量の方向で努力が続けられ、現在市場に流通している製品には、痕跡程度の量(0.004 mg/ml~0.008 mg/ml)のチメロサールしか含まれていません。 また、最近ではチメロサールが含まれていない製品も出荷されています。 しかし、このような製品は従来のものに比べて保存がきかず、細菌などの微生物が繁殖しやすいため、その管理や取り扱いにはこれまで以上の注意が必要です。 また、価格や接種手技上の問題点も残っています。
魚類に含まれるメチル水銀濃度(厚生労働省) | ||
魚類 | 検体数 | メチル水銀濃度(ppm) |
クロカジキ | 5 | 0.44※※ |
マカジキ | 10 | 0.71※※ |
キンメダイ | 13 | 0.58 |
サメ | 331 | 0.98※ |
ユメカサゴ | 50 | 0.33 |
インドマグロ | 8 | 1.08 |
クロマグロ | 19 | 0.81 |
メバチマグロ | 16 | 0.74 |
センネンダイ | 10 | 0.60※ |
ツチクジラ | 5 | 0.70 |
バンドウイルカ | 5 | 6.60 |
イシイルカ | 4 | 0.37 |
コビレゴンドウ | 4 | 1.50 |
ミンククジラ | 40 | 0.12 |
ニタリクジラ | 43 | 0.03 |
マッコウクジラ | 5 | 0.70 |
注) ※:総水銀の値 ※※:カジキとして、598検体、総水銀1.00ppmという報告あり。