インフルエンザの治療指針(治療方針)
WHOガイドライン
欧米の季節性インフルエンザに対する考え方を反映し、リスクのない健康な成人や小児の軽症インフルエンザには、抗インフルエンザウィルス薬を投与しません。欧米では、季節性インフルエンザの治療は重症化と死亡の防止を目的としています。抗インフルエンザウィルス薬のうち、オセルタミビル(タミフル)だけの早期投与が推奨されています。
抗インフルエンザウィルス薬での治療を推奨するリスクのある人とは、①インフルエンザと診断され入院が必要な人、②慢性の肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫・気管支喘息など)、心疾患(狭心症・心筋梗塞など)などの基礎疾患を持つ人、③65歳以上の高齢者、④6歳未満の低年齢小児、⑤妊婦と分娩後2週以内の褥婦、⑥高度の肥満者などです。
アメリカ疾病管理予防センターCDCの考え方
CDCでは、①入院を必要とするような重症な人、②65歳以上の人、5歳未満の小児、③妊婦、④気管支喘息、糖尿病、慢性の心臓病などの持病がある人、⑤エイズなどで免疫力が落ちてる人、に積極的な投与を提唱していますが、それ以外の人には必須でないとしています。
日本感染症学会提言
季節性インフルエンザは自然軽快傾向のみられる上気道炎症状から生命の危機に及ぶ呼吸不全や脳症まで、幅広い臨床増を呈する疾患です。特に、高齢者や幼児、妊婦、基礎疾患を有する人は、重症化のリスクを有しており、続発性の細菌性肺炎による高齢者の超過死亡も問題となっています。
抗インフルエンザウィルス薬での治療を推奨する人とは、①インフルエンザと診断され入院が必要な人、②重症あるいは症状の進行する外来患者、③65歳以上の高齢者、④2歳未満の小児、⑤妊婦と分娩後2週以内の褥婦、⑥慢性疾患及び免疫抑制患者を含む、インフルエンザの合併症のリスクが高い外来患者などです。
日本小児科学会治療指針
季節性インフルエンザに対する抗インフルエンザウィルス薬の有効性に関する知見は、有熱期間の短縮の他、抗インフルエンザウィルス薬の早期投与による重症化予防効果が示されています。
外来における治療方針は、①幼児、基礎疾患がありインフルエンザの重症化が高い患者、呼吸器症状が強い患者には投与が推奨される。②発症後48時間以内の使用が原則(保険適応は48時間以内)であるが、重症化のリスクが高く症状が遷延する場合は発症後48時間以上経過していても投与を考慮する(この場合は自費治療になります)。③基礎疾患を有さない患者であっても、症状出現から48時間以内にインフルエンザと診断された場合は各医師の判断で投与を考慮する(患者への説明・同意が必要)。④一方で、多くは自然軽快する疾患であり、抗インフルエンザウィルス薬の投与は必須ではない。
日本小児科学会が示す抗インフルエンザウィルス薬
①オセルタミビル(タミフル):すべての年齢層に推奨する。
②パロキサビル(ゾフルーザ):12歳以上に推奨する。6歳未満には推奨しない。6歳以上12歳未満には慎重に投与。
③サナミビル(リレンザ):6歳未満は吸入困難。6歳以上は吸入可能な場合に限り推奨する。
インフルエンザと診断されたら抗インフルエンザウィルス剤を飲まないといけないか?
季節性インフルエンザは自然軽快する疾患であり、症状として特徴的な二峰性の発熱、全身症状(筋肉痛・関節痛・倦怠感・頭痛など)、呼吸器症状(咳嗽・鼻水・喀痰など)、消化器症状(下痢・嘔吐・腹痛など)があります。稀に重症化し呼吸不全や脳症などを合併します。
外来でのインフルエンザ迅速検査は1999年に発売されました。それ以前は臨床症状と流行状況から「インフルエンザ」と診断していました。「インフルエンザ」は「流行性感冒」と同じです。また、抗インフルエンザウィルス薬は2000年に発売されました。それ以前は「解熱剤」「風邪薬」などの対症療法と自宅安静で治療していました。
今の保護者の方々や若い世代の人達は、インフルエンザ迅速検査や抗インフルエンザウィルス薬を使わない診断・治療がある事を知りません。50歳以下の医師もインフルエンザ迅速検査を使用しない診断や抗インフルエンザウィルス薬を使用しない治療を経験してません。
結論として、抗インフルエンザウィルス薬を飲む事は必須ではありません(飲まないといけない薬ではありません)。医師から抗インフルエンザウィルス薬の使用時における注意(異常行動の発現など)を聞き、保護者や患者様の意思で決める事です。「インフルエンザ」と診断後、薬に関して説明せずに抗インフルエンザウィルス薬を処方する事は、医師の説明義務違反になります。世界で抗インフルエンザウィルス薬の大部分を消費している日本では、積極的な投与が必要でない人達にも処方しているのが現実です(保険診療のデメリットかもしれません)。
