流行性耳下腺炎
(おたふくかぜ)
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)とは?
小児によくみられる急性ウィルス性全身感染症であり耳下腺腫脹を主症状とする疾患です。
ムンプスウィルスの飛沫感染により起こります。幼児から学童期に多く、30~40%は不顕性感染ですが、この場合でも終生免疫を獲得します。
感染性があるのは耳下腺腫脹前7日頃から腫脹後9日頃までで、最強感染期間は腫脹1日前より3日後までです。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は自然治癒傾向のある疾患ですが、時には重大な合併症を起こすことがあるので注意が必要です。
症状は?
①潜伏期:約2~3週間
②前駆症状:稀に発熱、頭痛、耳下腺部の違和感など。幼若児では前駆症状を欠く事が多い。
③発熱:37~38℃台の発熱は約半数に数日間みられる。
④発病:耳下腺の両側性腫脹が多く、両側同時や片側が腫れて1~2日後に他側が腫れる。片側性のこともある(約25%)。
⑤経過:腫脹の多くは3~7日で消失するが10日位まで遷延することもある。発熱は普通1~6日間で消失する。発熱や腫脹が1週間以上つづく場合は髄膜炎など他の合併症の可能性があります。
合併症は?
①髄膜炎・脳炎:無菌性髄膜炎が最も多い合併症であり発生頻度は2~10%前後とされ、耳下腺腫脹後3~10日に発症する。症状として発熱、頭痛、嘔吐など。一般に予後良好です。
②睾丸炎・副睾丸炎・卵巣炎:睾丸炎は小児では稀で、思春期以後の男性に発症する(約20~35%)。多くは片側性で不妊の原因となることは稀です。卵巣炎は成人女性の5~7%に発症する。
③膵炎:発熱、激しい上腹部痛、嘔吐などを伴って急激に起こる。
④その他:難聴、腎炎、甲状腺炎、心筋炎、血小板減少性紫斑病、肝炎など。
家庭看護は?
安静にさせ、無理に寝ることはありませんが、家でのんびりしてることが一番です。
酸っぱいものや果汁などは唾液分泌を亢進させ、痛みを増強するので避ける方が望ましい。
次の診察は?
指示した日、薬のなくなる日などに(大体2~3日おきに)受診して、余病を起こしてないか診てもらいましょう。
元気がなくなった、何度も吐く、強い腹痛を訴える、などいつもと違うぞと思ったら、早めに受診して下さい。
反復性耳下腺炎とは?
6歳未満の小児に多く、突然、片側あるいは両側の耳下腺が1~2週間持続して腫脹し、年に数回反復します。軽度の圧痛はあるが発熱はあっても37℃台が多い。予後は良好で、15歳までに80~90%が自然に治ります。
化膿性耳下腺炎とは?
年長児で稀にみられ、片側性で、発熱、耳下腺腫脹や疼痛、腫脹部の皮膚の発赤が起こります。原則として入院加療が必要です。
ムンプス(おたふくかぜ)ワクチン
弱毒化ウィルスを使った生ワクチンです。日本では1歳以降の希望者に1回ないし2回接種します。以前はMMRワクチンとして定期接種でしたが、MMRワクチン接種中止後は任意接種になりました。海外ではMMRワクチンとして接種される事がほとんどです。
ムンプス(おたふくかぜ)ワクチンの場合、1回接種の有効率は95%前後ですが、2回接種すると99%以上になります。
ワクチンの副反応として稀に無菌性髄膜炎が発症します。また、ワクチン接種後には、ツベルクリン皮膚検査に対する反応性の一過性低下が認められています。
米国におけるMMRの2回接種スケジュールの一環として、1回目は生後12~15ヵ月に、2回目は4~6歳時に接種されます。4~6歳で接種されていなければ、2回目接種を思春期に入る前に接種する必要があります。