マイコプラズマ感染症
マイコプラズマ感染症とは?
マイコプラズマ・ニューモニアという病原体の感染によって、主に患者さんの咳で飛沫感染します。 家族内や職場内で多く感染します。一度罹った人が再感染することもあります。 生後6ヶ月未満には少なく、4歳から20歳に多く、潜伏期間は2~3週間です。症状としては、肺炎、無気肺、胃腸炎、髄膜炎、脳炎、溶血性貧血、中耳炎、血小板減少性紫斑病などを起こします。
マイコプラズマ感染症の発症は、3歳以前には稀です。5歳未満の小児では軽度であり、上気道感染症(咽頭炎)、嘔吐および下痢を伴います。下気道感染症(気管支炎・肺炎)の発現率は学童期にピークに達します。3~15歳の小児では、全市中感染肺炎の7~40%をマイコプラズマ肺炎が占めています。反復感染の頻度は低いですが、成人では4~7年間隔で発症することがあります。
マイコプラズマ肺炎とは?
激しい乾いた咳、高熱、全身倦怠感が3大症状です。咳は多くの場合、痰を伴わない乾いた感じの咳で長期間続きます。その他に胸膜炎、結膜充血、頭痛などを伴うこともあります。 乾いた激しい咳が続くわりに、胸部聴診上も問題なく、一般に全身状態は良好です。胸部レントゲン検査で間質性の淡いびまん性浸潤陰影を認めることが多い。 稀に、肺の一部に空気が行かなくなり、その部分の肺の大きさが縮む無気肺になることがあります。
合併症は?
①皮膚合併症としては、様々な皮疹があり、最も著しいものには、斑状丘疹、多形性紅斑およびStevens-Johnson症候群です。通常は最初の呼吸器症状の発現から3~21日後に発現し、持続期間は14日未満であり、重症合併症を伴うことは稀です。
②神経合併症としては、髄膜脳炎、横断性脊髄炎、無菌性髄膜炎、小脳性運動失調、Bell麻痺、聾、脳幹症候群などです。神経合併症は呼吸器症状の発現か3~28日後(平均10日後)に発現しますが、20%の症例においては先行する呼吸器症状が認められません。
③マイコプラズマ感染症による脳炎は、あらゆる形態の小児期にみられる脳炎のうち5~15%を占めており、最も多くみられる症状は、発熱、嗜眠および意識障害です。
治療方法は?
テトラサイクリン系やマクロライド系抗生剤が有効です。対症療法として去痰剤などを併用します。
確定診断は?
血液検査で血清抗体価が以下の3つの場合に、それぞれ陽性と診断されます。
①発病初期と回復期のペア血清で4倍以上の上昇。
②単一血清で補体結合反応(CF)で64倍以上の上昇。
③間接赤血球凝集反応(IHA)で320倍以上の上昇。
外来での迅速検査は?
従来の迅速検査(マイコプラズマ抗体定性)は血清IgM抗体を検出する方法であり、近年、外来にて採血し直ぐに結果がでる迅速検査法(血液検査)とし用いられることが多くなりました。 本法はマイコプラズマ感染初期(急性期)から治癒後約1年6月まで陽性(感染を示す)であることもあり、また疑陽性(感染がないのに感染を示す)も多く、血液検査(血清抗体価)と併用して診断する必要があります。 現時点では信頼性に問題がある検査法です。
平成25年8月1日にインフルエンザ検査と同じで、咽頭拭い綿棒を使って抗原を調べる迅速検査(マイコプラズマ抗原定性)が発売され、外来で約15~20分で検査することが出来るようになりました。 この検査の特異度は高く(約90%)く、マイコプラズマ感染症以外の疾患で陽性を示す事はほとんどありません。
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マイコプラズマ肺炎に何回も罹るのか?
患者さんは外来診察時にマイコプラズマ迅速検査(血液検査)で頻回に陽性(罹患)になりマイコプラズマ肺炎と診断されたようですが、 従来の迅速検査(マイコプラズマ抗体定性)では感染初期から治癒後1年6ヵ月まで陽性を示すことがあるので、最初の感染から持続して陽性化しており、 2回目以降は、マイコプラズマ感染症は否定的です。 この検査の特異度は低い(約50%)ので、確定診断にはペア血清(2~3週間隔で採血)での診断が必要です。
平成25年8月1日にインフルエンザ検査と同じで、咽頭拭い綿棒を使って抗原を調べる迅速検査(マイコプラズマ抗原定性)が発売され、外来で約15~20分で検査することが出来るようになりました。 この検査の特異度は高く(約90%)、マイコプラズマ感染症以外の疾患で陽性を示す事はほとんどありません。